熱性けいれん〜初めての入院
その夜、僕は熱が出始め、だるいなあ〜と思いながら寝た。
「えー、三歳男子、まだけいれん中、ええ、ちょっと長いですね、はあ、無理ですか…わかりました」
知らない人のそんな声がぼんやりと聞こえ、気付いたら変な狭い場所にいた。父が僕の名前を呼んでいる。母が涙目で僕を見つめ、ヘルメットに白い服のおじさんがバタバタしている。
「タカ!気づいたか?!ほら救急車だぞ、救急車に乗ってるぞ」
と父が言うのでゆっくり目を動かしてみた。
「ああ、、意識戻った…?!」と母。
「ええ、はい、あ、そうですか!わかりました、向かいます」と、電話を持ったヘルメットのおじさん。
「病院見つかったようです、出発しますよ!」僕のそばにいたおじさんがそう言うと
次の瞬間、
ぴーぽーぴーぽーぴーぽーぴー…
え、ぴーぽー??
はっっ!!!これはっ!!もしかして!!
きゅうきゅうしゃ本物?!
僕、乗ってるの?!
その時、熱性けいれんを起こして意識を失っていた僕の顔に、初めて表情が戻ってきたらしい。そう、『ぴーぽー』のその音に、僕は我を取り戻したのだった。
ぴーぽーぴーぽーぴーぽーぴー…
僕は今、救急車に乗っている。救急車は道路の王様。まわりの庶民の車は王様のために道を空ける。
…ってこの変なマスク(酸素吸入器)がすごい邪魔。とりたいなあ、とってやる、えいっ…とやったけどあわてて戻されてしまった。さらに抵抗する力が出ない。どうしたんだろう僕。父母やヘルメットおじさんがわーわーたくさん話してくるけどよくわからない。それよりここ、変なものがいっぱい。きょろきょろ。
そうしてる間に病院に着いて、ちょっと吐いて、あっという間にお医者さんや看護士さんたちに囲まれ、体に変なものをぺたぺた貼られた。さらに腕に痛い針をさされ包帯を巻かれ、お尻から薬を入れられながらお医者さんが
「う〜ん、目もしっかりしてるし大丈夫かな?…一応明日脳波検査して…少し入院ですね」
と言っているのを聞き、父母がホッとしているのを見ていたらうとうと眠くなり…
再び目覚めたら、写真のような柵の中に軟禁されていたというわけ。これなんて遊び?一時的に熱の下がった僕はこの不思議な環境を調査せずにいられない。早速「ちょっとお外見てくるよ!」と母に告げたが即却下。確かに、動こうとすると、僕から出ているたくさんの線やら管が絡んで動けない。ひっぱると痛いし。
「タカは昨日大変だったんだよ!救急車乗ったんだよ、じっとしてなきゃダーメっ!」
え、救急車って、それは楽しい事じゃないの?ちょっと意味がわからない。お熱があるのはわかるけど。
仕方なく母がテレビカードを買って来て二人でテレビを見たり、父がもってきてくれた飛行機や汽車で遊びながら過ごしていた。おしっこに行きたくなって、トイレに行くと管につながった邪魔くさいもの(点滴)が付いてくる。こんなものはもう嫌だ!部屋に戻って無理矢理それをとろうとしたけど取れない。
「これヤだ!とりたい、とりたい、とりたいーーっ!!」とわめいたら看護士さんが来てくれて
「そんなに…それほどまでに嫌なら取っていいか先生に聞いてくるね」と言ってくれ、5分後には解放された。言ってみるもんだな。
その後も熱がありながらちょっとした隙を狙って外に出て走っては怒られ、酸素の機械を壊すほどにいじったりしていたら担当の看護士さんが母に
「いつもこんな感じなんですか?すごいですね…」
と、なにやら激褒め。ふふ、それほどでも!
その日は柵の中で、神経科の怖そうな先生やおもしろい小児科の先生、看護士の優しいお姉さんたちを接待。夜中に救急で僕を診察してくれた先生も何度も病室に来てくれた。夕方近くにも来てくれたその先生、一体いつ寝てるんだろ?それにしても看護士さんやお医者さんってすごいなあ、もちろん救急隊員の人も。僕たち家族はすっかりファンになったよ。
初めての脳波検査は、甘いシロップを飲まされたらすぐに眠くなり、その間に行われたようなので全く覚えていない。結果は異常なし。子供は高熱が出ると熱性けいれんを起こしやすく、僕は特にそれが起きやすいんだって。
(母はいまだに白目で痙攣してる僕の顔がちらついて離れないらしい。だからといって怒らなくなったかといえば…それは全くないんだ)
二度目の救急車、初めての入院、退院後も続いた高熱、救急車に乗ったはいいが病院がなかなか見つからず相当衰弱したらしい父母、あわただしい日々だった。40度の熱も慣れたらだんだん平気になってきて、ご飯をぱくぱく食べた僕。今日はすっかり元気になって暴れまくっているよ。休んだ分取り返さないと!
by takahito_k121
| 2009-05-30 23:03
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